埼玉県設計事務所様に特注アクリル水槽/アクリル水槽についてプロ目線でしっかり解説!
本日は、今月下旬に埼玉県内の設計事務所さまに納品・設置予定のアクリル水槽が完成致しました。
特注サイズW2250/D450/H600の寸法で、海水(マリン)テラリウム水槽として納品する予定です。この水槽には、プロとしてのこだわりがしっかりと詰め込まれています。
今回は、「水槽レンタル(リース)」「水槽メンテナンス」において日々使用する水槽の「アクリル水槽」について、プロ目線でしっかりと解説していきたいと思います。
目次
水槽の材質って?アクリルってどんな素材?
「水槽レンタル(リース)」「水槽メンテナンス」を日々行う~A.N.G ~にとって、水を張る水槽は最も重要な機材である反面、その材質をしっかりと把握し、クライアント毎にそれを使い分けていく事はこのビジネスを行うプロとして最も重要な事です。
それを理解せずに業者任せにしてしまうと、実は無駄なコストをかけさせられていたり、適正な材質選定が行われておらず、最悪水漏れ等の事故を引き起こされてしまう場合もあります。
導入をご検討の方は、水槽やその関連機材に関して、しっかりと材質の特性まで把握した業者さんを選ばれるのが理想です。
まず観賞用水槽や関連の機材の材質には、大きく分けて【ガラス製】と【プラスチック製】の2種類に大別されます。
それぞれの特徴には、一長一短あるのですが、今回はガラスの細かな説明は割愛します。
まずプラスチックですが、これは「合成樹脂」の総称であり、使われる用途によりいくつか種類が細分化されていきます。
特に水槽製作に多く利用されるのが、アクリル樹脂(=ポリメタクリル酸メチル樹脂、以下「アクリル」と表記)で、「プラスチックの女王」とも呼ばれています。
一般的に、この樹脂で制作された水槽をアクリル水槽と呼びます。
その特徴として、(無機)ガラスと比べその透明度は高く、衝撃にも強いので、水を入れて観賞する水槽にはもってこいの材質です。別名、「アクリルガラス」とも呼ばれています。皆さんが一番身近に目にするものとしては、携帯電話のディスプレイ画面であったり、飛行機の窓の材料にも使用されています。
さらに、同寸サイズのガラスと比べ、重量が軽く(約半分)、熱や圧力により加工がしやすいのも水槽の材質として使われるメリットです。例として「半円型」や「円柱型」、「扇型」等様々な形状の水槽がありますが、これはほぼアクリルで製作されています。
デメリットとしては、非常にキズが付きやすく高温な熱に弱く、表面は静電気によりホコリが付着しやすい面があります。また水を張った際、ほぼ間違いなく膨らみが生じます。
他によく使用するプラスチックには、アクリルと似た性質の「ポリカーボネート樹脂」や、「塩化ビニル樹脂」というものがあります。
これらはアクリルよりも透明度が低い反面、それぞれ熱適応性や衝撃に対して優れている性質があるため、水槽以外の関連用途として、水槽用のフタ、浄化目的の水槽(別名:ろ過層)の材料として使われています。
また、相対的に幅90㎝以上のサイズになってくると、価格面で言えば「ガラス水槽」>「アクリル水槽」になる事が多いのですが、水槽・その他関連機材の材質選定基準は、上記メリット・デメリットの特性を設置状況に合わせて選択していくのが一般的であり、本来価格で選ぶものではありません。
価格面のみを先行した業者さんの場合、大型水槽=アクリルが安いでクライアントに提案する事が多いようです。
本来アクリルを選ぶ基準は、耐久性が強い(ガラスよりも割れにくい)・軽量・加工がしやすいから等で選ぶのであり、直射日光の入る設置場所(高熱になり易い)や、硬い岩組みを高くまで入れるディスプレイ構成の場合(特に海水魚)、細かな歯を持つ大型の魚種(大型のプレコ等)の選定をする際には、ガラスの方がベターなケースもあるのです。
アクリル水槽の強度について
次にアクリル水槽の強度について説明していきたいと思います。
強度に影響する要素は、一般的に板の材質(厚み含む)と製作における加工方法(接着方法)になります。
まず、アクリル板の種類には以下2種類があります。
・押し出し板・・・粘土状のアクリル樹脂を、ローラーにより押し出して製作するアクリル板。のちに説明する加工法:溶剤接着との相性が良い。大量生産ができる分、価格が安く出来る。後述のキャスト板に比べ、硬度が低く、クラック(ひび)が入り易いと言われています。
・キャスト板・・・2枚のガラス板の型の間に流動性アクリル樹脂を流し込み製作するアクリル板。のちに説明する加工法:重合接着との相性が良い。手作業工程が多いため、押し出し板よりも高額になるが、クラックが入りにくく強度も強く、より大型の板が製作できる。溶剤接着には、押し出し板よりも時間がかかる為、製作コストも高くなる。
上記の2種類とは別に外国産のアクリル板も存在しますが、上記国産2種と比べると質が低い為、~A.N.G ~では使用しません。
次に、加工方法について説明していきます。加工法も大きく分けて、以下2種類となります。
・溶剤接着(膨潤接着)・・・フラットな板の接着面に専用の溶剤を利用し流し込み、アクリル板同士を溶かし同化接着させていく方法。職人さんの個々の技術や、溶剤の種類・配合によりメーカー独自の差が出る事が多いです。*強度や仕上がり技術にも差が出ます
主に接着用溶剤の種類には、有毒性のガスを出すものもあるため、そういった溶剤を使用するメーカーさんは、労働基準局の監督のもと下記の排気装置内での接着作業を行っています。
・重合接着・・・接着する面に少し隙間を作り、そこにアクリル硬化剤(重合液)を流し込み板自体を一体化させる加工。一般的に溶剤接着よりもアクリル水槽の強度が高く、板そのものの強度を約7~8割程度引き出せる加工法といわれています(*溶剤接着では3~4割程度)。
近年の水族館などの大規模な水槽の多くは、強化ガラスに変わってアクリルにてこの加工法で制作されています。
また、重合製作過程には、「アニール処理」と呼ばれる加工を施します。
「アニール処理」とは、一般的に物体の加工によって生じた物体内部の力=残留応力を除去する処理のことで、アクリル板内に残る板自体の反る力を減らし、クラックの発生や時間差の寸法ズレなどを少なくするために行います。
具体的にアクリル水槽の「アニール処理」は、アニール槽(重合槽)と呼ばれる空間に接着加工処理を施す水槽をおき、常温~67,8℃迄徐々に温度を上げて、重化液処理をしていきます。温度の上昇幅も、一時間に2℃程度ずつゆっくりと行われます。さらに重合材が固まったあとも、職人さんによるはみ出した部分の加工処理等の作業が入っていきます。
これら一連の作業は、納期にも大きな時間がかかってきますので、当然製作コストも上がってきますが、これにより強度・精度共に優れた水槽が完成します。
日本の国産キャスト板は、世界的に見てもどこのメーカーのものも質が非常に高く、コストも横並びです。つまりアクリル水槽の価格の違いは、上記のような技術加工を行える設備投資と、手間隙のかかる作業の人件費によって変わってくるという訳です。
どんな物・サービスでも質の高さにコストがかかるのは当然ですね(>_<)
今回の水槽のこだわり
~A.N.G~ではクライアントの設置場所、使用用途、コスト感全てを考慮してトータルでどの材質のプラスチックを使うのか、どの加工を得意なメーカー様にお願いするのかを吟味して水槽や関連機材を製作していきます。*通常の同業者さんは意思疏通が簡単で、安いアクリル水槽メーカーを使うだけです
今回の水槽は、国産キャスト板を使用し膨潤接着により水槽製作をしておりますが、今回は特別にこのアクリル水槽製作のこだわりを少しだけ教えちゃいます(^^♪
まず、W2250幅というこの数字、実は業者レベルで言うと非常にコスパの悪い数字(寸法)です。
何故かというと、W2000を超える水槽サイズは、一般的にどこの配送業者さんも大型便の荷物として判断する寸法の為、混載配送が出来ません。つまり、自社で回収に行くかチャーター便にするか等、いずれにしても水槽以外の大きな配送コストがかかってしまうサイズです。しかし、納品先で置ける限界数値残り250mmであっても、コスト最優先ではなくデザイン重視の決断です。
更に気になった方もいるかもですが、水槽背面についた謎の黒いBOX・・・。
実はこれは、水槽内のレイアウトに妥協をしないための加工です。
そもそも水槽のろ過方法には色々な種類があるのですが、今回はOF方式(オーバーフロー)を採用しており、OFとは簡単に説明すると観賞用の水槽とは別に浄化槽用水槽(ろ過槽)を設け、大幅に水の浄化を計る仕組みです。
今回は、このBOXから水を落とし、浄化槽用の水槽(ろ過槽)に水を送るシステムになるわけです。
通常のOF方式は、水槽内部に穴をあけ、そこから水を落とす仕組みをとることが一般的です。その場合穴の空いた周辺はお魚達が落ちないよう乱雑したパイプ類がくる関係上、多くの無駄なスペースが取られてしまい、見栄えも良くありません。何より水槽内のレイアウトもそれを隠すようなデザインに片寄ってしまいます。
ならこの黒いBOXのサイドスペース分水槽にしちゃえばもっと広く使えるのでは?との考えも聞こえそうですが、実はこのスペースにもちゃんと意味があります。
このスペースは架台内部に納めた水槽用クーラーの排熱を逃がすためわざと確保したものですので、これがマストなんです。
今回の納品先はデザインが本職のデザイナー事務所さまです。
インテリア(としての水槽)の位置付けは、そのもの単体だけで決めるものではありません。周りにある全ての装飾やテーマとのバランスで決めるものです。
水槽の価格や仕様の都合だけで、水槽内外のデザインを妥協するのはプロとしては二流ですね。
その証拠に、更にこだわりを1つ。画像の水槽を見れば分かりますが、この水槽のフランジ位置間隔は、W(幅)に対して均等ではありません。これは、水槽上部のレイアウトにまでこだわったテラリウム仕様にする事を考慮し、製作メーカー様との協議の元、最終的に見せたいレイアウト構図までイメージしているからの仕様なんですが…。※その意味なかなか伝わらないのが辛いですね(笑)
質の高い水槽レイアウトを提供することは、以前にもブログに書いた通り、この「熱帯魚水槽レンタル」「海水魚水槽レンタル」「水槽メンテナンス」のサービスを利用するにおいて最も重要な要素です。
質の高い水槽レイアウト(装飾)の製作とそのレンタルについてはこちら
このように~A.N.G~では、クライアントにとってどのようなレイアウトを施すのが最善なのかテーマを設け、質の高いレイアウトをご提供する事を最も大事にしています。その為には、見た目だけでなく水槽機材の材質・機能にもしっかりとした経験知識をもって状況判断し、それを選定し使い分けしています。
オーダー水槽導入のご検討の場合、特に水槽は長く付き合っていく重要な機材です。
近年多いのは、一般受け考慮の妙な水槽形状のデザインや安値ばかりで、最終的に使用されるエンドユーザー様へのトラブルの事等、全くお構い無しのアクリル水槽メーカー等も存在します。
水槽の管理業者なんて安い方が良い、どこでも同じなどと考えているお考えの方もいるかもですが…、きっとその方はご自身がやられるビジネスでも同じように考えられているのでしょうね。まあ、安いに越したことはありませんが(笑)
しかし、本物のアクリル水槽メーカーや、レイアウトのプロが製作する水槽が何なのかを良く理解して無い方ほど、結局一番無駄なコストがかかっていますのでご注意下さいね♪
昔からアクアリウム業界は、水交換不要やらなんやらのシステム・商材やらが生まれては消える、不思議な業界ですので。
本記事では、「水槽レンタル(リース)」「水槽メンテナンス」というサービスにおけるプロが日々使用するアクリル水槽について、プロ目線でしっかりと解説させて頂きました。
~A.N.G~では、埼玉・東京・神奈川・千葉・群馬エリアを中心に質の高いアクアリウム水槽のレンタル、リースを出張メンテナンス付で導入をご検討の皆様のお役に立てるでしょう。
特に他社からの切り替えでたくさんの感謝のお言葉を頂いております。これからもその声を大事にひとつひとつ丁寧に水槽のレイアウト製作をして参ります。 水槽でお困りの際は現状のサービスが当たり前と思わず、是非お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。
お問い合わせは下記から
*アクリル水槽文章監修協力